展覧会の記録|exhibition archives 2020

「野中 梓 展」

2020年10月5日(月)〜10月10日(土) Oギャラリーeyes

 

-油絵について- 

前回の個展以降、絵を描くにあたって写真を用いることと、像を引き延ばすことを一度やめてみようと考えていた。写真を撮って記録することで、目の前に無いものや固定できないものを資料にすることができる。拡大縮小することで、肉眼とは違った見方をすることもできる。しかしそういった機能を利用して絵を描くことにどこか引っかかりを覚えていたため、改めて対象を見て描くことにした。対象は主に自宅の壁面や冷蔵庫など、毎日目にする物の平らな表面である。同じ表面でも時間帯や光の当たり方など、状況は変化する。ぼんやりと家の中を眺め、さまざまな壁の様相にふと出会う。油絵具で絵を描くことを前提にすることによって得られる眺めだと思う。夜には夜の、夕方には夕方の絵を、それぞれの壁の前に立って描いた。

 

-日光写真について-

ある時カメラについて検索していて、コピーアートペーパーという感光紙の存在を知った。手のひらサイズのその紙は光を遮る袋に入っており、袋から出してすぐは薄黄色で、陽に当たると白色へ変色する。感光時間は直射日光で5~10秒ほど、室内の窓辺で1~2分、曇りの日だと10~20分といった具合だ。アイロン掛けをして熱すると黄色は青色に、白色に変色したところはそのまま白色で現像される。その性質により、様々な影を紙の上に留めることができる。最初は自宅のベランダや窓辺で試し、慣れてからは出かけ先でも行うようになり、だんだんのめり込んでいった。結果として残るのは紙切れ一枚だが、その過程では光源から物、物から影、影から紙へと、光が届くまでの距離や、空間の厚みのようなものを感じられる。 

 

2020年 野中 梓